医薬企業を対象とする商業賄賂防止コンプライアンス指導に照らした
医薬企業におけるコンプライアンス制度の構築
(後編)
弁護士 金英蘭
弁護士 倪雨桐
三、医薬企業におけるコンプライアンス管理体系の確立
上述の商業賄賂の状況から見てみると、製薬業界の商業賄賂は生産・流通・販売・使用・費用精算などの多くの段階において頻発している。多くの地域の指導を基に、後文においてはリスクの評価、コンプライアンス管理制度体系の構築、およびコンプライアンス管理体系運営の保障という三つの面からコンプライアンス管理体系の構築に対する整理と総括を行う。
1. リスクの評価
医薬企業は科学的な商業賄賂リスク評価手続を確立し、これによりリスクを識別・分析・評価・処置し、リスク評価手続とその結果の有効性を定期的に評議・審査しなければならない。リスク評価は追加的な提携パートナー・業務契約・第三者に対する管理制御や費用精算その他の潜在的な商業賄賂リスクの分野を網羅することができ、評価方法には抽出検査を通じた評価と、全面的な評価が含まれ得る。全面的な評価は少なくとも年に一回行うことができ、さらには頻発する商業賄賂の状況に対する重点的な評価の実施も検討することができる。
2. コンプライアンス管理制度体系の構築
医薬企業は以下のいくつかの面からコンプライアンス管理制度体系を構築することができる。
審査:企業は商業賄賂防止コンプライアンス審査制度を確立し、コンプライアンス審査を規則制度の制定や重要な契約の締結等の重大事項の必要手続とすることができる。社内の各部署が初審に責任を負った上でコンプライアンスを主導する部署が複審に責任を負い、法令違反の内容を速やかに処置して商業賄賂リスクを防止する。
研修:企業は商業賄賂防止コンプライアンス研修制度も確立して研修を従業員研修計画に組み入れ、異なる職位へのコンプライアンス管理要求を踏まえた上で焦点の絞られた研修を実施することができる。研修の形式は内部研修、専門家のセミナー、テーマセッションおよびウェビナーとし、研修内容の定期的な更新と、研修効果の評価を行うこともできる。
リスクの早期警報:企業はコンプライアンスリスク早期警報制度も確立し、経営管理活動におけるコンプライアンスリスクを系統的に整理した上で、リスクの可能性、影響の程度および潜在的な結果に対する系統的な分析を行い、深刻なリスクに対する早期警報を速やかに公開することができる。
照会:企業は実際のコンプライアンス上の必要性に応じて商業賄賂防止コンプライアンス照会制度も確立することができる。製品の販売・生産・研究開発等を担当する各部署は商業賄賂のリスクに遭遇した際には、これをめぐる見解をコンプライアンス主管部門に主体的に照会しなければならない。複雑なまたは専門性の高い事項をめぐっては外部の法律の専門家や専門的な機構に照会することもできる。
報告・評価:企業はコンプライアンス報告制度も確立し、コンプライアンス管理責任者がコンプライアンス管理状況をコンプライアンス管理委員会に定期的に報告することができる。また、コンプライアンス管理評価制度も確立し、コンプライアンス管理業務の有効性に対する分析の定期的な実施を通じてコンプライアンス管理制度上の欠陥を探し出した上で、これを継続的に改善することもできる。
通報・問責:企業は通報制度も確立し、内部における商業賄賂の潜在的な災禍の通報を従業員に奨励するとともに、通報者の合法的な権益を保障することができる。コンプライアンス主管部門は通報内容を迅速に審査した上で調査結果をコンプライアンス管理委員会にフィードバックしなければならない。また、問責制度を通じて規律違反責任と処罰基準を明確にすることにより、規律違反責任の速やかな追及を確保することもできる。
3. コンプライアンス管理体系運営の保障――第三者に対する管理
企業は業務契約を第三者と締結するに当たっては、同契約に商業賄賂防止条項を組み入れなければならず、特に、ハイリスクの第三者を対象としては、年に一度の「商業賄賂防止コンプライアンス声明」の提出という方法を採択して一定のリスクを回避することができ、かつ、自社または招へいされた第三者機構によるコンプライアンス検査の実施を通じて自社と関連当事者の法令遵守状況を監督し、評価することもできる。
三、まとめ
医薬品の分野は従来、中国において腐敗防止に対する監督管理が厳格に行われてきた分野ではあったが、今回の医薬品の分野における腐敗防止行動において体現されている監督管理に込められている決意は、これまでのものよりも更に堅固なものとなっている。地方のコンプライアンス指導にとどまることなく、実際のところは法律の等級においても、新たな「反不正当競争法」は2024年度の立法業務計画に既に組み入れられており、その意見募集稿においては、贈賄対象の範ちゅうが拡大されているほか、さらには贈賄の他者への指示も、商業賄賂を構成し得ることが明確に規定されている。また、収賄行為に対する禁止規定も行われ、商業賄賂行為に対する処罰の強度も引き上げられており、これにより政策の面における商業賄賂に対する厳重な処罰に向けた決意とすう勢が体現されている。医薬企業は法令・政策・監督管理・法執行の動向に綿密な関心を払いながら事件の予防措置の採択に取り組まなければならない。
(終)