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「反不正当競争法(改正草案)」の解読

2025-01-14/ 弁護士コラム/ 張国棟  韓尚武  弁護士 張国棟、韓尚武

市場競争行為を全面的に規範化する基礎的な法律として、「反不正当競争法」は公平な競争市場環境の構築、および事業者と消費者の合法的な権益の保護にとって重要な意義を有している。中国の「反不正当競争法」は1993年の正式な施行から2017年と2019年の二度にわたる改正を経て、このところは三度目の改正の途上にある。

「反不正当競争法」の三度目の改正は2021年の12月に始まり、2022年の11月22日には市場監督管理総局が「反不正当競争法(改正草案意見募集稿)」(以下「意見募集稿」)をめぐる意見の公募を社会に向けて公開し、2024年の12月25日には全国人民代表大会が「反不正当競争法(改正草案)」(以下「改正草案」)をめぐる意見の公募を社会に向けて公開した。二年前の「意見募集稿」に比べると、新たに公布された「改正草案」の内容には一定の程度における調整が見られており、全体的にはより穏健なものとなっている。以下においては「改正草案」の主な改正内容をめぐるご紹介と解読を行う。

一、より厳密な商業賄賂取締りの仕組みの構築

1、商業賄賂の本質への回帰

2017年の「反不正当競争法」(以下「現行法」)においては「取引相手」が商業賄賂の贈賄対象の枠から外され、それは商業賄賂の本質への回帰であるとともに、職務上の利益の交換行為に対する処罰への専心でもあり、これにより正常な商業上の革新または奨励活動の「不当な商業賄賂化」が有効に回避されるものと考えられていた。ところが、2022年の「意見募集稿」においては「取引相手」が商業賄賂の贈賄対象に再び組み入れられることとなり、このような取扱方法は若干の特定の市場主体または分野(例えば病院)にとっては一定の合理性があったものの、法制度全体にとっては同制度の後退であったものと結論付けることができた。今回の「改正草案」においては「取引相手」が贈賄対象の範囲から再び排除され、商業賄賂の本質に回帰し、「現行法」における三種の贈賄対象の範囲が維持されている。

2、「贈収賄同時捜査」の堅持

「現行法」に比べると、「改正草案」の商業賄賂に関する部分における最大の変化は収賄行為に対する取締強度の引上げである。「改正草案」においては「組織と個人は取引活動において賄賂を収受することができない」という旨が明確に規定されており、収賄の法的責任も相応に規定されている。「改正草案」の第二十三条によると、収賄行為については仮に法律または行政法規に別段の定めが行われている場合には、その規定に従って処罰を下し、法律または行政法規に規定が行われていない場合には、組織を人民元200万元以下の過料に処することができ、個人を人民元50万元以下の過料に処することができる。

長期にわたって中国においては商業賄賂行為を対象とする「贈収賄同時捜査」が一貫して強調され、かつ、追求されてはいるものの、法的規範の欠如、案件処理の必要性などの現実的な原因により刑事犯罪の分野においては往々にして収賄者の法的責任の追及に偏重し、贈賄者の責任は数々の場合において軽減され、ひいては免除され、行政法執行の分野においては入札募集・入札、医薬などの特別な分野を除いて一般的な贈賄行為の行政責任の追及が非常に難航する傾向がもたらされている。対向的な違法行為として、贈賄または収賄のどちらかを選んで罰することしかできないのであれば、商業賄賂行為の有効な抑止の可能性を期待することは非常に難しい。

ひとたび収賄行為に対する処罰規定が「反不正当競争法」に組み入れられれば、市場監督管理総局法執行機関の強大な法執行チーム、広範な法執行ネットワーク、および豊富な法執行上の経験を踏まえて見てみると、将来的な商業賄賂(特に収賄)行為に対する取締強度には空前の引上げが生ずるものと断言することができる。

3、両罰制の追加、処罰金額の調整

贈賄行為の処罰について、「改正草案」と「現行法」を比較した上でのもう一つの重大な変化は両罰制の導入であり、組織に対する処罰の実施に加えて個人に対する行政処罰も増設されている。具体的に述べると、事業者が賄賂を実施した場合において、事業者の法定代表者、主要責任者および直接の責任者は賄賂の実施に対する個人的な責任を負っていたときは、人民元100万元以下の過料に処せられる。もしも今回の改正が最終的に発効すれば、それは法定代表者とプロジェクト責任者を含む企業の経営陣がより厳格なコンプライアンス面における監督管理上の職責を負担しなければならなくなることを意味するものとなり、企業のコンプライアンス管理に対するより高い要求が課せられることとなる。

このほか、組織に対する処罰についても「改正草案」においては過料金額の上限が現行の人民元300万元から人民元500万元に上方調整されており、商業賄賂に対する国の更なる取締りに向けた決意と姿勢が十分に表明されている。

二、内向きな悪性の競争に対する拒絶

「現行法」において列挙されている七種の不正競争行為に対する拡充と完全化の実施のほか、各業界において目下深刻化の一途をたどっている内向きな悪性の競争を対象としても「改正草案」においてはこれへの呼応が試みられており、法律の面における相応の対策が提起されている。

1、大手企業の優位的な地位を利用した中小企業に対する不合理な契約条件設定の禁止

2024年の11月にBYD社が電子メールを通じて提起した価格引下げの供給業者への要求は世論の関心を集め、完成車メーカーと自動車部品の供給業者との間における矛盾が顕著に示されていた。調達価格は抑えられれば抑えられるほど低下し、支払周期は引き延ばされれば引き延ばされるほど長期化し、巨額の賠償を伴う違約責任の負担が頻繁に要求され、完成車メーカーの優位的な地位を前に、部品供給業者は自社にとって公平性を明らかに失している一連の取引条件を飲まざるを得ない。また、ただ自動車製造業の分野のみにとどまらず、その他の各業界の分野においても類似の問題はいずれも異なる程度において存在している。

上述の現象を対象として「改正草案」においては「大手企業等の事業者は自社の資金、技術、取引ルート、業界内の影響力などの面における優位的な地位を濫用し、中小企業を対象とする明らかに不合理な支払条件・支払方法・支払期限・違約責任の設定、排他的協議書締結の強制その他の方法を通じて公平な競争の秩序をかく乱することができない」という旨が特別に規定されている。仮にこの義務に違反した場合においては、先に法執行機関から是正命令が下され、是正を拒否したときは、人民元100万元以下の過料に処せられ、情状が深刻であったときは、人民元100万元以上500万元以下の過料に処せられる。

「改正草案」における問題の解決を目標とした上で法律の改正を通じて現実的な切迫した問題を解決するという初志には非難に値するほどの点はないが、独占禁止をめぐる市場支配的地位に達していない「優位的な地位」を保持する事業者に対する行政的な干渉を直接行うに当たっては、これに係る競争法の理論上の支えがなおも乏しいものと考えられる。また、「大手企業」「優位的な地位」「不合理な契約条件」などの一連の要素の判断基準が不明確なままになっていることから、行政法執行機関の司法機構に代替した契約内容に対する実質的な審査への過度な介入により、契約法の基盤である意思自治の原則への行政法執行力の過度の干渉と同原則の破壊がもたらされ、これにより市場取引の安定性と予期可能性に悪影響が及ぶのではないか、というような懸念事項も存在している。このようなリスクをめぐっても、十分な考量、および適切な防止と解決に向けた筋道の模索が必要となる。

2、原価を下回る商品販売のプラットフォーム事業者からその他の事業者への強制の禁止

「改正草案」においては「プラットフォーム事業者は自らの価格決定規則への服従、コストを下回る価格を用いた商品の販売、または公平な競争の秩序のかく乱をプラットフォーム内の事業者に強制することができない」という旨が規定されている。この義務への違反に伴う法的責任について、仮に法律または行政法規に規定が行われている場合には、その規定に従い、法律または行政法規に規定が行われていない場合には、違法行為停止の命令と違法所得の没収のほか、人民元10万元以上100万元以下の過料に処せられ、情状が深刻であったときは、人民元100万元以上500万元以下の過料に処せられる。

現行の「電子商務法」の第三十五条においては「電子商取引プラットフォーム事業者はサービス協議書、取引規則、技術などの手段を利用してプラットフォーム内の事業者のプラットフォーム上における取引、取引価格、その他の事業者の取引などに対する不合理な制限または不合理な条件の付加を行うことができない」という旨が規定されている。仮にこの義務に違反した場合には、市場監督管理総局が期限付きの是正を命じた上で人民元5万元以上50万元以下の過料に処し、情状が深刻であったときは、人民元50万元以上200万元以下の過料に処することができる。

仮にプラットフォーム事業者が原価を下回る価格を用いた商品の販売をプラットフォーム内の事業者に強制した場合には、これは当然のように不合理な制限に属するとともに、「電子商務法」への違反も構成する。「改正草案」における上述の規定には「電子商務法」との間において部分的に重複する箇所が存在しており、罰則の面においては「電子商務法」が優先的に適用されなければならない。このような場合において「改正草案」におけるこの部分の改正内容の独立的な存在意義の有無については、更なる検討の余地が残されている。

三、混同惹起行為とその罰則に対する更なる拡充・完全化

1、混同惹起行為の行為類型の追加

「現行法」に列挙されている混同惹起行為を基礎とし、「改正草案」においては次の各項の行為も同様に混同惹起行為に属し、反不正当競争法の規制を受けることが明確にされている。

①他者の一定の影響力を帯びたニューメディアのアカウント名称、アプリケーションプログラム名称またはアイコンの無断使用

②他者の登録商標または未登録の「馳名商標」(日本国内で言うところの著名商標)を用いたこれの自社の名称中の商号への無断使用

③他者の一定の影響力を帯びた商品名称、企業名称(略称・商号等を含む。)などの自社の検索キーワードへの無断設定

上述の①と③の混同惹起行為については司法の実践においてそれが不正競争行為であるものと認定された多くの事例が既に存在しており、上述の②の混同惹起行為については2022年3月20日に実施された「最高人民法院 『中華人民共和国反不正当競争法』の適用をめぐる若干の問題に関する解釈」(以下「反不正当競争法司法解釈」)の第十三条第(二)項の規定に直接由来している。「改正草案」には上述の混同惹起行為が追加されており、これは情報ネットワーク時代において頻発している不正競争行為の現実への呼応であるとともに、比較的に成熟している司法裁判上の経験に対する洗練と総括でもある。

2、混同惹起行為実施ほう助の明確な禁止

「現行法」の混同惹起行為に対する追加のほか、「改正草案」においては「事業者は他者の混同惹起行為の実施に便宜を図ることができない」という旨が更に規定されている。事業者は仮に混同惹起行為の実施に向けて第三者をほう助した場合には、「改正草案」の第二十二条に基づいて混同惹起行為を実施した事業者と同様に行政処罰を受ける。

このほか、民事責任の範ちゅうにおいては混同惹起行為への便宜の供与の性質が違法行為であるものと明確に定められていることから、仮に事業者が他者の混同惹起行為の実施に便宜を図った場合には、権利侵害行為とその法的結果に関する法的規範の定義上、同者の行為は共同不法行為を構成するものと認定され、これにより連帯賠償責任または補完的な賠償責任の負担が要求される。

3、違法商品販売の法的責任の追加的な規定

混同惹起行為に起因して発生する関連商品(サービスを含む。以下「違法商品」)の販売に伴う法的責任について、「改正草案」においては「違法商品を販売した事業者は原則として混同惹起行為の実施に準じて処罰を受ける。ただし、事業者に主観的な過失が存在していなかったことを証明するに足る証拠が存在している場合には、販売停止命令の発出後に行政処罰は下されない」という旨が規定されている。

「主観的な過失の不存在」に対する判断の基準について、現行の「商標法」第六十条や「反不正当競争法司法解釈」第十四条などの関連規定を参考にすると、以下の三つの要件を満たしていなければならないものと筆者は考える:(1)自らが販売した商品が違法商品に該当していたことを知らなかったこと。(2)当該商品を合法的な方法を通じて取得したこと。(3)違法商品の提供者について説明を行うこと。

四、インターネットの分野における企業競争コンプライアンスへのより高い要求の提起

AI技術と業界との融合の加速的な進展に伴い、インターネットの分野は既に不正競争行為の頻発する分野となっている。オンライン不正競争行為に対する規制は昨今において不正競争の防止をめぐる立法と法執行上の極めて重要な任務となっている。2022年の「意見募集稿」においてはオンライン不正競争行為の改正にかかわる内容が非常に大きな範囲を占めていた。これらの内容のうちの相当の部分は2024年9月1日に実施された「オンライン不正競争暫定規定」において既に反映されている。これを基礎として「改正草案」においてはインターネットの分野における企業の競争上のコンプライアンスに対する更なる要求が提起されている。

1、プラットフォーム規則の公平な競争の属性の強化

「改正草案」においてはプラットフォームサービス協議書と取引規則中におけるプラットフォーム公平競争規則の明確化、および必要な措置を速やかに採択したプラットフォーム上における事業者の不正競争行為の制止が、プラットフォーム事業者に要求されている。事業者はデータ、アルゴリズム、プラットフォーム規則などを利用して不正競争行為を実施することができない。

「改正草案」によると、事業者によるプラットフォーム規則の濫用、悪意的な取引の実施、および他の事業者が合法的に提供するネットワーク関連商品・サービスの正常な運営の破壊は、オンライン不正競争行為を構成する。また、「オンライン不正競争暫定規定」の第十六条によると、「プラットフォーム規則の濫用と悪意的な取引の実施」には主として以下の数種の状況が含まれている。

(1)意図的な短期間内における他の事業者との大規模な、または高頻度の取引の発生や好評価の実施などを通じた当該他の事業者を対象とする検索エンジンによる検索結果表示順上の優先度の処罰的な引下げ、信用等級の引下げ、ECサイト上からの商品の削除、リンクの遮断、サービスの停止などの処分への遭遇の誘発

(2)悪意的な短期間内における大量の商品購入ボタンクリック後の不払い

(3)悪意的な大量購入後の返品や荷受けの拒絶など

2、事業者データの保護に対する慎重な強化

「改正草案」においては「詐欺、脅迫、サイバー攻撃などの不正な方法を用いた他の事業者の合法的に所有するデータの取得と利用は、オンライン不正競争行為を構成する」という旨が規定されている。

実際のところは「改正草案」において列挙されている「詐欺」「脅迫」「サイバー攻撃」という三種の明らかに違法なデータ取得方法のほか、「意見募集稿」においては取決めまたは合理的かつ正当なウェブスクレイピング協議書に違反したデータの取得も、オンライン不正競争行為に当たるものと同様に認定されていたが、今回の「改正草案」においてはこの部分の内容は据え置かれていない。この点においては今回の「反不正当競争法」の改正をめぐる慎重な姿勢が体現されている。

ただし、ここで注意しなければならないのは、たとえ「改正草案」においては取決めまたは合理的かつ正当なウェブスクレイピング協議書に違反したデータ取得の行為が、オンライン不正競争行為として明確に画定されていなかったとしても、司法の実践においてはクローラ技術等を利用した他者のデータの盗用が不正競争行為を構成するものと認定された多くの司法判例[例えば番号が「(2017)粤03民初822号」の案件、「(2019)京73民終2799号」の案件など]が既に存在していることから、このような行為は法執行の実践においても不正な方法を用いた他者のデータの取得に属するものと同様に認定され、これにより「反不正当競争法」の処罰を受ける可能性がある、という点である。

3、オンライン不正競争行為に対する行政処罰強度の引上げ

このほか、「現行法」に比べると、「改正草案」においてはオンライン不正競争行為に対する行政処罰の強度が引き上げられている。具体的な処罰金額の変化は下表の示すとおりとなっている。

情状性質

「現行法」(単位:人民元)

「改正草案」(単位:人民元)

一般的な違法行為

10万元以上050万元以下

010万元以上100万元以下

_深刻な違法行為

50万元以上300万元以下

100万元以上500万元以下

五、まとめ

上述の主な内容のほか、「現行法」に比べると、「改正草案」においてはその他の多くの箇所に対する改正も行われており、これは例えば、虚偽の宣伝、不正な販売奨励、商業上の誹謗中傷などの不正競争行為の行為類型の拡充・完全化、法執行の段階における面談制度の増設、個人のプライバシーと個人情報に対する保護の強調、附則の部分における「反不正当競争法」の域外適用効力の追加などを挙げることができるが、紙幅の都合上、本稿においてはそれらの逐一のご紹介を割愛する。

今回の「改正草案」の意見募集期間は2025年1月24日までとなっている。今回の意見募集後においては、現実的なニーズに呼応することもでき、持続的かつ安定的な仕組みを構築することもできるより完備された合理的かつ論理的な「反不正当競争法」の可能な限り早急な公布が期せられている。

(終)


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