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日本の企業や大学に初めて発動された 中国の輸出管制規制リストと注視リストの概要について

2026-02-28/ 弁護士コラム/ 弁護士 姜雨潤

2026年2月24日、中国の春節休み明けの初日に、中国商務部は2026年第11号公告(以下「11号公告」という。)[1]を発出し、日本の一部重工企業等を含む20の組織(18企業、1大学、1行政独立法人)を中国輸出管制[2]の規制リスト(別訳:輸出管理コントロールリスト、輸出規制管理リストなど)に掲載し、また、同日に2026年第12号公告(以下「12号公告」という。)[3]を発出し、日本の一部自動車企業等を含む大手20の組織(19企業、1大学)を中国の注視リスト(別訳:懸念リスト、監視リスト)に掲載することを決定した。

11号公告、12号公告は、中国政府が日本の組織を対象にこれらのリストを運用し、輸出規制をかけた初の事例である。本稿では、中国輸出管制の規制リスト及び注視リスト(以下これらをあわせて「両リスト」という。)の発動条件、輸出規制措置、リストからの除外、これまでの運用状況などの概要を簡単に整理する。

一、両リストの発動条件

中国「輸出管制法」[4](別訳:輸出管理法。以下「」という。)第18条及び「デュアル・ユース品目輸出管制条例」[5](以下「条例」という。)第28条に従い、次の事由のいずれか一つに該当する輸入事業者、エンドユーザーは、商務部によって規制リストに追加される場合がある。

(1) エンドユーザー又はエンドユースの管理要件に違反した者。

(2) 中国の国家安全又は利益に危害を及ぼしうる者。

(3) 輸出規制対象品目をテロリズム目的に使用した者。

(4) デュアル・ユース品目を大量破壊兵器及びその運搬手段の設計、開発、生産又は利用に使用した者。

(5) 中国の関係省庁から関係する取引や提携の禁止又は制限などの措置を受けた者。

注視リストの発動条件について、条例第26条第1項によると、商務部はデュアル・ユース品目のエンドユーザーとエンドユースについて調査する権限を有する。輸入事業者、エンドユーザーが所定の期限内に商務部の調査に協力せず、関係する証明資料を提供しなかったことにより、エンドユーザーとエンドユースの確認ができない場合、商務部は該当する輸入事業者、エンドユーザーを注視リストに追加する場合がある。

以下では、両リストに掲載された輸入事業者、エンドユーザーを「対象エンティティ」という。

二、適用される輸出規制措置

対象エンティティが受ける輸出規制措置について、関係法令上可能とされるもの、及び11号、12号公告において実際に発動された措置は、下表のとおりである。

項目

法令上可能とされる輸出規制措置

11/12号公告において

実際に発動された措置

輸出管制規制リスト

輸出規制対象品目の取引に対する禁止又は制限。(法第18条第2項、条例第29条第(1)、(2)号)

【直接輸出の禁止】

輸出事業者から対象エンティティへのデュアル・ユース品目の輸出の禁止。

関係する輸出規制対象品目の輸出中止命令。(法第18条第2項、条例第29条第(3)号)

実施中の関係活動の即刻停止。

その他必要な措置。(条例第29条第(4)号)

【海外再輸出の禁止】

中国国外の組織と個人から対象エンティティへの中国原産のデュアル・ユース品目の移転又は提供の禁止。

注視リスト

デュアル・ユース品目の輸出許可申請における個別申請方式の強制化。(他の方式である包括許可方式、登記・情報記入方式の適用が不可)(条例第26条第2項)

(同左欄)

輸出申請における追加資料(対象エンティティのリスク評価報告書、輸出管制関係法令と関係要件を遵守する旨の誓約書)の提出。(条例第26条第2項)

誓約書の要件(デュアル・ユース品目を日本の軍事実力向上に資する用途に使用しないことを保証する誓約書)の以外、他は同左欄。

輸出申請に対する審査期間の上限(45日間)の撤廃。(条例第26条第2項)

(同左欄)


輸出審査におけるエンドユース、エンドユーザーのより厳しい審査


日本の軍事ユーザー、軍事用途、その他日本の軍事力向上に資するあらゆるエンドユーザー、エンドユースに係る輸出申請の不許可[6]

三、両リストからの除外申請及びその要件

法的に、一定の条件を満たした場合、対象エンティティは両リストからの除外を中国商務部に申請することが可能とされる。

そのうち、条例第30条によると、対象エンティティが輸出管制規制リストからの除去を申請するためには、次の条件をいずれも満たす必要がある。

l中国商務部の調査に協力すること。

l関係する事実をありのまま陳述すること。

l違法行為を停止すること。

l積極的に措置を講じ、有害な結果を除去すること。

l要求に従って誓約を行うこと。

l条例第28条所定の事由に該当しなくなったこと。

また、条例第26条第3項によれば、注視リストからの除去を申請するためには、中国商務部の調査に協力し、かつ、調査の結果、エンドユースの無断変更、第三者への無断譲渡などの事由がないと認められる必要がある。

四、両リストのこれまでの運用状況

前述のとおり、11号公告、12号公告は、中国政府が初めて日本の組織を対象に両リストを運用する事例である。また、12号公告は、注視リストという制度の初運用である。ただ、下表のとおり、これまで中国は米国と台湾の80以上の組織に対して発動した先例があるため、11号公告は輸出管制規制リスト自体の初運用ではない。

日付

商務部公告

対象エンティティの状況

輸出管制規制リスト

注視リスト

2025/1/2

2025年第1号

28の米国組織(企業28)


2025/3/4

2025年第13号

15の米国組織(企業15)


2025/4/4

2025年第21号

16の米国組織

(企業15、非営利組織1)


2025/4/9

2025年第22号

12の米国組織(企業12)


2025/7/9

2025年第35号

8の台湾組織

(企業7、行政法人1)


2025/9/25

2025年第51号

3の米国組織(企業3)


2026/2/24

2026年第11号

2026年第12号

20の日本組織

(企業18、大学1、行政独立法人1)

20の日本組織

(19企業、1大学)

合計

米国(74):企業73+非営利組織1

台湾(8):企業7+行政法人1

日本(20):企業18+大学1+行政独立法人1

計:102組織

日本(20):企業19+大学1

計:20組織

現時点、公開された情報において、両リストからの除去申請に成功した先例は特に確認されていない。ただ、米中貿易協議の進捗を受け、これまで中国商務部は米国の一部対象エンティティリストに関して、両リストに係る輸出規制措置の実施の一時停止又は中止を発表した事例[7]は存在する。

五、まとめ及びアドバイス

以上のように、両リストのうち、輸出管制規制リストに掲載された対象エンティティは、中国からデュアル・ユース品目を輸入することができなくなるため、同リストは米国の輸出規制措置における「エンティティ・リスト」(Entity List, EL)に相当すると言える。他方、注視リストに掲載された対象エンティティは、デュアル・ユース品目の輸入が完全に禁止されているわけではないが、エンドユースやエンドユーザーの実態の確認ができず、より厳しい審査を受けるため、米国の「未検証リスト」(Unverified List, UVL)に相当すると考えられる。

発動の条件、適用される輸出規制措置やリストからの除外条件などで一定の差があるとはいえ、両リストは、中国からデュアル・ユース品目を輸入する際に不利益を被るという点において共通する。特に、前述のとおり、現時点、両リストからの除去に成功した先例が確認されておらず、他方、中国の輸出規制措置の適用の一時停止又は中止の先例があるものの、これはハイレベルな政府間交渉の成果の一環であるため、なかなかハードルが高いと言わざるを得ない。

11号公告、12号公告は日本の企業や大学に対する初運用であり、また、これらの公告は施行からまだ日が浅いため、日系企業においては、両リストが今後どのように運用していくか(特に、注視リストの対象エンティティに対する輸出が許可されるかどうか、具体的にどのような基準で審査されるか、など)、対象エンティティが米国の例のように今後さらに増えるか、リストからの除去の可否及び政府間交渉の有無、日中関係が両リストの運用に対してどのような影響を与えるか、及び自社の貿易コンプライス対応及びサプライチェーンへの影響の有無などを含め、今後の動向を注意深くウォッチし、最善の対策を検討することを強く推奨する。

以上



[1] 中国商務部:https://www.mofcom.gov.cn/zcfb/zc/art/2026/art_a73f2b59e13d4454b0f58618917f3944.html

[2] 中国法における主な輸出規制/輸出管理措置は、対象となる品目によって、①「対外貿易法」などに基づく、特定の一般品又は全ての品目を対象とする輸出制限、輸出禁止措置に加え、②「輸出管制法」などに基づく、軍事転用が可能なデュアル・ユース品目や軍事用品など国家安全保障に係る品目を対象とする輸出管制措置に分けることができる。両者を区別するため、また、「管制」という中文原文表記を尊重する観点から、本稿では②及び②に関係する固有名詞などを「輸出管理」ではなく、「輸出管制」と和訳している。

[3] 中国商務部:https://www.mofcom.gov.cn/zcfb/zc/art/2026/art_d37432417c264da3b957c452e335df24.html

[4] 中国全国人民代表大会:http://www.npc.gov.cn/npc/c2/c30834/202010/t20201017_308277.html

[5] 中国国務院:https://www.gov.cn/zhengce/content/202410/content_6981399.htm

[6] 本項は、第11号、第12号公告によって新規発動された輸出規制措置ではなく、中国商務部が2026年1月6日に公表した2026年第1号の公告(URL後添)によってすでに発動されたものである。

中国商務部:https://www.mofcom.gov.cn/zwgk/zcfb/art/2026/art_8990fedae8fa462eb02cc9bae5034e91.html

[7] 中国商務部:

https://www.mofcom.gov.cn/xwfb/xwfyrth/art/2025/art_09a94ead2b57413eb851369fc15ba900.html

https://www.mofcom.gov.cn/xwfb/xwfyrth/art/2025/art_2d1e85ffaebf4ed9913f35f2afb5c436.html

https://www.mofcom.gov.cn/xwfb/xwfyrth/art/2025/art_7e09fc75390f4a078466b56ac9d6503a.html


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