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「広告引用内容の法執行ガイドライン」の解説 ――企業のコンプライアンス課題と対応策

2026-07-07/ 弁護士コラム/ 弁護士 李霆輝

企業が広告に引用内容を盛り込むのは、第三者のデータ、調査報告書、権威ある認証を活用してブランディングを強化し、広告の信頼性と説得力を高めることを目的としています。しかし実務では、「大きな文字で目を引き、小さな文字で責任を免れる」「結論ありきで後付けでデータを作る」や、「範囲の過度な限定」といった消費者を誤認させる広告が散見されており、これらは消費者の権利を侵害するだけでなく、市場秩序を乱すことから、当局は広告の引用内容を重点規制分野としています。そのため、引用内容を含む広告を配信する際、いかにコンプライアンスを確保するかは、企業が優先で考慮すべき事項となっていると言えます。

従来、「広告法」は引用内容について「真実かつ正確であり、出所を明示すること」を原則として規定しているにとどまり、具体的な判断基準は必ずしも明確ではありませんでした。そのため、実務上は長期にわたりグレーゾーンが存在していましたし、企業にとってもコンプライアンス対応上の障害となりました。こうした状況を踏まえ、20266月、国家市場監督管理総局は「広告引用内容の法執行ガイドライン」(以下「本ガイドライン」)を公布しました。これは「広告法」施行以来、引用内容に特化した初めての専門的な法執行規範です。本ガイドラインは、引用広告の主な表現形式を踏まえ、「広告法」の関連条項を細かく解釈しており、広告管理制度の体系を改善し、事業者の広告引用内容のコンプライアンス水準を向上させ、公正かつ秩序ある競争環境の形成を目的としています。なお、20263月から市場監督管理総局による6か月間にわたる全国規模の法執行活動がスタートし、広告における情報開示および注意表示の不備の是正を重点的に取り締まる方針となっています。

一連の対策は、当局が不適切な広告を体系的に是正する強い姿勢を示すものです。中国における日系企業にとって、これはコンプライアンス環境がより厳しくなることを意味するため、この動向は特に注目に値するものと考えられます。特に、コスメティクス、自動車、家電、健康食品などの業界では、検査データ、統計調査、文献引用などを用いた広告が一般的であることから、本ガイドラインの規制対象と大きく重なります。

一、広告における引用内容の法的枠組み

「広告法」第11条第2項では、「広告においてデータ、統計資料、調査結果、抜粋、引用文などの引用内容を使用する場合は、その内容が真実かつ正確であり、出所を明示しなければならない。引用内容に適用範囲や有効期限がある場合は、それを明確に表示しなければならない」と規定されています。さらに同法第28条では、「虚偽または捏造された、あるいは検証不可能な科学研究の成果、統計資料、調査結果、抜粋、引用文などの情報を証明材料として使用する」広告を虚偽広告に該当すると定められています。これらの条項が、広告の引用内容を規律する法的根拠となっています。

2023年に市場監督管理総局が公布した「広告絶対的用語の法執行ガイドライン」、2018年に上海市広告協会が公表した「広告『引用内容』の審査に関する留意点」など業界規範も一部、広告の引用内容を規律する内容を含んでいます。あくまで指導的文書であり、法律や行政法規を構成するものではないとはいえ、本ガイドラインの公布により広告関連規制の空白がさらに埋められ、本ガイドラインは実質的に引用広告に関する実施細則となります。今後の広告引用内容の規制および法執行において、重要な役割を果たすことが期待されます。

二、本ガイドラインの主な変更点

本ガイドラインは全28条からなり、以下の重要な変更点はコンプライアンス実務に直接関わっていると考えられます。

1.「引用内容」と「自社証明内容」の区別、規制対象を第三者機関に拡大

本ガイドラインでは初めて、「引用内容」と「自社証明内容」が明確に区別されました。そのうち、「引用内容」とは、広告主以外の自然人、法人、その他の組織が生成・作成し、かつ広告主が販売する商品またはサービスに関連するデータ、統計資料、調査結果、抜粋、引用文などを指します。一方、「自社証明内容」とは、広告主が自ら実験、測定、統計、調査などの方法で取得したデータ、統計資料、調査結果、またはAIが生成した内容を指します。引用内容とは異なり、自社証明内容については、法令に特別な規定がない限り(もっとも、AI生成である場合にはその旨の表示が依然として必要となる)、出所を明示する必要はありません。

本ガイドラインの大きな制度的イノベーションは、第三者機関に対する「ルックスルー」式管理、すなわち、第三者機関がその取り扱ったデータが広告に使用されることを「明らかに知っている」または「知るべきであった」、場合、当該機関は直接「広告法」で規定される「広告事業者」として認定され、規制の対象となります。ここで「明らかに知っている」とは、契約などを通じて明確な意思表示があった場合を指し、「知るべきであった」とは、他社からの委託を受けて取得したデータが3回以上広告で引用された場合を指します。この規定は、企業の要望を鵜呑み、規制回避を支援する第三者機関のグレーな産業にピンポイントで狙い撃ちしています。

2.引用内容の類型別規制の明確化

本ガイドラインの第4条から第7条では、引用内容の種類ごとに広告における引用内容の適切な記載の明確な要件が定められています。例えば、実験・測定・検査データについては、引用内容の発行者は法定資格を有する必要であり、計量器具や設備環境は国家基準に適合していなければなりません。国家標準または業界標準が存在する場合には、それに厳格に従う必要があります。次に、統計および調査については、方法論の科学性、広汎性および合理性が求められ、誘導的または恣意的なサンプリングは禁止されています。さらに、文献および引用語については、出典の真正性および検証可能性が求められ、その結論が科学的常識や業界の一般的認識と整合している必要があります。また、引用内容は原データの趣旨と一致している必要があり、文脈を歪める形での利用は認められていません。

3大きな文字で目を引き、小さな文字で責任を免れる」という不正への対処

実務で見られる「大きな文字で目を引き、小さな文字で責任を免れる」という不正に対し、本ガイドラインの第10条および第11条では、出所、適用範囲、有効期限を示す文字のフォント、サイズ、色などは、「一般公衆が通常の状況下で明確に識別できる」要件を満たすべきであり、文字サイズの縮小、フォントの変更、背景に近い色の文字の使用など、消費者を誤認させてはならないと明確に規定しています。本ガイドラインはさらに、この原則に違反する場合は、当該広告が「広告法」第8条の明示基準に違反すると認定され、「広告法」第59条に基づき処罰されると規定しています。すなわち、広告主は広告配信の停止命令および10万元以下の罰金という行政処罰を受ける可能性があります。

4.「範囲の過度な限定」への規制強化

もう一つ留意すべき点は、本ガイドラインの第13条が絶対的用語の規制に対して重要な補完を行ったことです。これ以前に市場監督管理総局が公布した「広告絶対的用語の法執行ガイドライン」では、時間や地域などの条件を限定した絶対的用語が処罰対象の例外となりうることが規定されていました。しかし本ガイドラインの第13条では、絶対的用語をさらに制限しています。本ガイドライン公布後、「最高級」「ベスト」「第一」などの絶対的用語が含まれる広告は、それが指す地域が省級行政区域より狭い(例:「〇〇県で売上高第一」)、業界または分野が「国民経済業種分類」などの国家標準・業界標準で規定される業種分類より細かい(例:「家庭用ドライヤー売上高第一」)、または専用の製品・サービスに関する国家標準・業界標準が存在しない場合は、いずれも例外を適用できないとされます。この規定に違反した場合、「広告法」第57条に基づく処罰を受ける恐れがあるだけでなく、関係する内容が虚偽であるか、または消費者に事業者およびその商品の市場地位、競争優位性などについて誤解を生じさせる可能性がある場合は、さらに虚偽広告と認定され、「広告法」第55条に基づく処罰を受ける恐れがあります。

三、コンプライアンス対応策

本ガイドラインによる法執行基準の変化を受け、中国における日系企業におかれましては、既存広告の精査、体制整備、依頼先管理、研修強化という4つの側面から、体系的なコンプライアンス対応を行う必要があると考えられます。

1.既存広告の精査

現在配信されているものであって、引用内容を含む広告について調査を行うべきと思われます。特に以下の3つのリスクに注目する必要があります。(1)視覚的コンプライアンス。「大きな文字で目を引き、小さな文字で責任を免れる」の有無を確認し、出所の記載が完全であり、制限条件が明確に識別可能で、「一般公衆が通常の状況下で明確に識別できる」状態を確保しなければなりません。(2)絶対的用語を含む広告の確認。絶対的用語における地域が省級以上か、業界または分野が業種分類に適合しているか、商品に国家標準または業界標準があるかを判断する必要があると考えられます。(3)データの真実性と検証可能性の検証。引用内容発行機関の法定資格、検査方法の科学性、引用内容と元データとの整合性、および引用されたウェブページのアクセス方法の有効性を確認します。コンプライアンスに適合しない広告については、企業は速やかに修正または配信停止を検討することが推奨されます。

2.引用内容についての審査メカニズムの構築

本ガイドラインに基づき、広告主は引用内容について立証責任を負い、「データは第三者から提供されたものである」ことを理由に免責されることはできません。これにより、企業は引用内容に対する実質的な審査能力を備え、広告引用内容のコンプライアンス審査メカニズムを健全に構築する必要があります。企業は本ガイドラインの要件を広告審査の全プロセスに組み込み、引用内容の専門的な審査プロセスを設けることが考えられます。すなわち、業務部門は企画段階で引用予定のデータを一次スクリーニングし、法務部門または外部弁護士は元ファイル、出所の表示、適用範囲について逐一審査を行います。同時に、可能な限り完全な電子アーカイブを構築し、少なくとも元の検査報告書、統計サマリーおよび内部審査記録を保存し、規制当局からの照会時に迅速に完全な証拠を提供できるようにすることが望まれます。

3.第三者との提携の検証と規範化

第三者のデータや情報を大量に引用する企業については、長年にわたり提携している検査機関や調査会社との間で、データが広告に使用されるシナリオを明確にし、それらの機関が「広告事業者」として負う責任を明確にすることを推奨します。提携先に対し、本ガイドラインの要件に適合する資格証明と検査・調査方法の説明を提供させ、提供する内容が真実、合法、かつ代表性を有することを約束させるといった対応が考えられます。法定資格を有する実験・検査機関を優先的に選択し、源流からコンプライアンスリスクを回避することが期待されます

4.コンプライアンス研修の強化

企業は本ガイドラインをコンプライアンス研修体系に組み込み、「受動的な対応」から「能動的な予防」への転換を実現することが望まれます。マーケティング、ブランドPR、およびライブ配信キャスターや販売員など、リスクの高い職種を対象に重点的な特別研修を実施し、各種引用内容の審査基準、虚偽広告認定の事由、および責任・リスクについて解説することを検討することを推奨します。また、研修では、実際の処罰事例や業界の規定違反シナリオを導入することで、業務担当者が違法行為の深刻な結果を深く理解し、自主的に規定違反を根絶できるようになることが期待されます。


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